家に帰ると、携帯の留守電に
「ちょっと試したんだ、冗談だよ」
とかなんか色々入ってたけど返事しなかった。
その夜のうちに、私のアパートにあった彼の物は全部、彼の実家に送った。
鍵の救急車みたいな店に電話して、割高だったが鍵を変えてもらった。
付き合ってる時も、向こうから交際を申し込んだせいか、会ってる時はとても明るくて優しいのに、
「会社に交際がバレるといけないから、結婚するまでは周りに秘密にしよう。だから僕からは必要な時連絡するけど、君はあんまり連絡しないで」
とか、不可解な言動が多かった。
「もしかして他に女が」
と思っていたので、実家に招かれて本当に嬉しかったのに。
ずっとメールや着信を無視して、家を空けていたら、家の近所で待ち伏せされて、コーヒー屋に連れ込まれ、
「話を聞いてほしい」
と言われたので、黙って聞いてあげた。
「気を悪くしたなら謝る、父親は厳しい人間で、嫁が家に相応しいかとか気にして、だから」
とか言ってた。
聞いてほしい、と言われたから黙って聞いて、黙って帰った。
夜中に鍵をガチャガチャひねる音がして、玄関扉を傷が付くほど何かで叩かれたので、扉の修理費の請求書を彼の実家に送って、
「会社と警察にストーカー被害で相談します」
と一筆書いておいたら、かなり多めの金額が入った書留がすぐ来た。
携帯もすぐ変えたせいかそれ以降は連絡ないし、会社では元々あまり会わない部署だったので縁も切れた。
時々思い出しては、
「口もききたくない奴に、あんなご馳走振る舞うのってどんな気分だったのかなー」
と思う。
今の義実家はあんなには料理美味しくないけど、賑やかで楽しい。