中学生の時、家庭教師に勉強を教えてもらっていた。
家庭教師の兄さんは、海外青年協力隊を務めた後、有名私立高校教師になった、非の打ち所のない立派な好青年であった。
一方の私は暗い、大人しい、声が小さい、の三重苦を兼ね備えた中学喪女。
いつも勉強がひとくぎりすると、家庭教師はくもりひとつない目をキラキラさせながら会話を仕掛けてくる。
人と話すことが苦手な私は、恥ずかしさも手伝ってか、下を向きながらただ相槌をうつばかりであった。
そんな日々がしばらく続いた。
ある日、私は何故か家庭教師の母親から呼び出された。
不思議には思いつつも、家庭教師の家はそれほど遠くもなく、私は単身家庭教師宅へと向かったのである。
すると…
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えー、結論から申しますと、その母親に訳の分からんイチャモンをつけられまして。
なんか
「家の子が、あなたが全然喋ってくれないって落ち込んでるのよ!なんなの!?人を無視して!何が楽しいの!?」
なんてことを言われちゃいましてね。
それがスゲー迫力で、もう怖くって言葉が出ないまま立ち尽くしていると、
「あなたのせいでね、家の子は夜に缶ビールを二本飲むようになったのよ!酔って悲しみを紛らわせているのよ!」
などと言ってくる始末。
ビール二本て、大人の嗜み程度じゃないの?
そして極めつけは
「あなたは家族とも話さない冷酷な人なのね!」
でフィニッシュ!
結局文句だけを散々ぶちまけられて帰された。
今となってはあのオバハンデスノートの角で頭を叩きてえ~!で済む話ではあるが、当時の私はその帰り道に悲しくなって泣きに泣いた。
きっと明るくて、友達が沢山いるであろう家庭教師は、私のような人種に今まで会ったことがなくて内心戸惑っていたのだろう。
だがそれを無視されていると思われていたことがショックだった。
まるで何か大きな壁に隔てられているようでもあった。
私だって、明るく誰かと会話してみたい。
でも、それが出来ないでいる自分がもどかしくて悲しかった。