どこでもドアが欲しかった

超ド田舎のクソ膿家で空気夫とクソウトメと同居。衝動的に命からがら逃げ出した…

time 2016/11/30

超ド田舎のクソ膿家で空気夫とクソウトメと同居。衝動的に命からがら逃げ出した…

母親が出た。 

「母ちゃん…! わたしあのね、今ね(泣きそう)」 
「○子!? 今どこ!?」 
「○○駅」 
「孫たちは!? お金もっとんか!?」 
「一緒、お金、もうないねん」 
「今から父ちゃんとそこまで行くから!
目立たんとこで待って、二時間したらロータリーに出ておいで!」 

受話器を置くと同時に泣いた。
鼻水がダラダラ流れるぐらい泣いてしまった。
助かるんだ。私は助かるんだ。 

人が少ない方面の、明かりが少ない階段の下で
三人で話しながら鼻をズルズルと鳴らした。 
一時間半で待ちきれなくなってロータリーへ出たら、
もう父親が待ちかまえていた。 

乗り込んだ車のシートの柔らかかったこと。
優しかったこと。 

息子らを抱える母と、険しい顔で運転する父を見て
「ごべんね…」とだけ言って寝入ってしまった。 

実家についたら兄と姉もきてくれていた。 
姉が食事を用意してくれて、お風呂わかしてくれて、
和室にお布団、三人分の着替えまであった。 

兄が息子らをお風呂に入れてくれている間、
お腹がすいて待てなくて食事をガッつこうとしたが 
口いっぱいほおばったところでとうとう、
わあわあと声をあげて泣いてしまった。 

久しく口にしていなかった肉の匂いがますます哀しさを呼んで、
子どもみたいに泣き、眠った。

ゲラゲラ笑う声で目が覚めると九時をまわっていた。 
寝過ぎたからか頭がものすごく痛かったが、
胸のうちはすっかり晴れている感じがしたのを覚えている。 

姉が勤めている託児所に息子らを預け、日が暮れるまで母と話した。 
といっても私が一方的にしゃべり倒して、母はただうんうんと聞いていたと思う。 
朝と夕、義実家からの電話が鳴り続けたが、それ以外は静かだった。 

家族に会い、友人に会い、話を聞いてもらって数日。 
すっかり元気になった頃に義実家から連絡が入った。
「そろそろ帰ってこないと知らないぞ」とのこと。 
父が「まあ、いろいろとお世話になったようで、ねえ?」
と言ったのをきっかけにウトがキレた。 

「くだらん家のしょうもない女をもらってやったのに偉そうな口のきき方をするな」 
「一旦嫁に来たなら二度と帰ることは許されん、それがうちのしきたりやが」 
「跡取り孫がどうしてもと言うからそんなところまで行かせてやっただけや」 
「掃除も洗濯も溜まりまくっとる、年とったばあさんにおさんどん全部させる気か」 
「夫くんの顔もわしらの顔も丸つぶれ、近所に顔向けできん」 
「戻ったらただで済むと思うなよ」「家族総出で謝りに来い」 
「嫁の代わりと孫を返すなら考えてやってもいいが慰謝料は言い値で払え」 

などなど、録音されているのも知らず、
ビリビリと音割れするほどの大声でぶちかましてくれた。 

以前の私なら萎縮してぶるぶる震え、
最終に飛び乗ってでも義実家へ戻っていただろう。

なぜか実家に帰りたくなり、なぜか元気になり、
なぜか義実家連中が怖くなくなった。 

父から受話器を取って 

「どうもお世話になりましたー! もうむりむり、むっりー」 
「え?話ですか?何の話ですか?は?意味がわかりませんねー」 
「こちらまで来るなら考えてもいいですけどねー?
えるだけですけどー、で、夫くんは?」 
「ああ、もうあんた無理ホンマむりwwwごめwwwwがんばwww」 
「何かあったら?は?携帯もってないしww
あんたがここに電話するしかないしwwwうぇwwwww」 

みたいなことをしゃべっていたらウトが横から
「離婚や!」と言ってくれたので、 
「ざーーーす!じゃ署名捺印して離婚届送ってくださいねー!
お待ちしてまーす!」と言って切った。 

それから一ヶ月経つがまだ送られてこないし、
徐々にトーンダウンした電話しかこないのでどうしたものか考え中。

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