部屋のチャイムが鳴った。
ほぼ鳴らしたのと同時くらいのタイミングで、 玄関の外から叫ぶような大きな声。
「こんにちはー、警察です、〇〇さんいらっしゃいますかー?」
やっと来た。
なんかもう1時間くらい経ったような気がするけど、 たぶん実際には通報から10分弱くらいだと思う。
それくらいの時間で来てくれるんだから、 なんだかんだで日本の警察は優秀なんだろうけど。
しかし俺は困ってしまった。
何しろ玄関のカギは閉まっているけど、開けにいけない。
「はい、居ますぅぅ~!! 助けて下さいぃぃ~~!!」
とにかく大きな声で外に向かって叫んだ。
と同時に、オッサンが観念したのかドアノブにかかる力が無くなった。
今ならカギを開けに行ける!と思った瞬間、 ガチャガチャと音がしてカギが開いた。
警察すげー!!!
玄関のドアが開き、若手の警察官と40代後半くらいの警察官が入ってくる。
玄関ドアの向こうから、マンションの管理人さんも顔を覗かせた。
なるほど、カギを開けたのは管理人さんだったようだ。
ちなみに残念ながらドミノピザの人は居なかった。
「通報がありましたが、どうされましたか?」
ドアノブを抑えている俺を見て、ちょっと怪訝な顔で年上の警察官が聞いてくる。
「泥棒をこの部屋にとじぇこめてます!」
ちょっと噛みながら言ったった!
「この中ですか!?」
若手警察官がびっくりして聞き返してくる。
さすがにもう大丈夫だろうと思い、ドアノブから手を離す。
指先がドス黒い赤紫になって、見た事もない色に変色していた。
手のひらにもクッキリとドアノブの形の凹みがついている。
ほんとに馬鹿みたいな力でドアノブを握っていたらしい。
「中です、なかなか」
俺が必死に伝えつつ警官に通路をあけると、 若い方の警官がドアをがちゃりと開けた。
中では、さっきのオッサンが半笑いを浮かべながら立っていた。
「逮捕して」
年上警察官がぼそっと呟いた。
若手警察官が腰のあたりから手錠を取り出して、 オッサンの手を掴んで手首にガチャリとかける。
「11時32分、住居侵入罪の現行犯で逮捕する!」
(↑うろ覚えだけど、確かこんな言い方だったと思う)
手錠をかけられても半笑いのオッサン。
不思議とあんまり抵抗しなかった。
この時なら何か、もみ合っても勝てる気がしたww
玄関の外から不安そうに中を覗いている管理人さんと目が合った。
なんか大げさにウンウンと頷かれた。
理由はよく分からなかったww
オッサンは灰色のリュックみたいのを持っていて、 その中から現金と母さんの宝石類とリビングに置いてた映画のDVDとかが出てきた。
映画のDVDなんて取って売れるのかなww自分で見るのかなww
若手警官に他に何も持ってないかチェックされた後、 オッサンは外に連れていかれてった。
ちなみに武器とかは持ってなかったみたいです。