死のうなんてはっきり思ったわけじゃないけど、
ふらふらと山を歩いていたら声をかけられた。
私より少しだけ年上の登山者達はとても心配そうにしていた。
私がまるでスーパーにでも行くような軽装で気になったらしい。
ただすれ違っただけなのに、わざわざ戻って話しかけにきてくれた。
「その靴でここまで登るの大変だったでしょ」
「ちょっとここに座りなさいよ」
「冷えてるじゃないの」
「これ飲みなさい」
いつの間にか身の上相談になっていた。
げすな好奇心とかは一切感じられず、とても親身になって話を聞いてくれた。
登山者達に囲まれながら山をおりた。
「一人で居ちゃ駄目だよ」と全員が連絡先を交換してくださって、
その日から暇があればアウトドアをすることになった。
登山者達の一人から一人の男性を紹介してもらって結婚し、
高齢出産まで体験できた。
医者に無茶苦茶脅されたが母子ともに健康。
あの時登山者達に声をかけて貰えなかったら死んでたと思う。