俺の彼女の金銭感覚は変わってて、長く使うもの(鞄、定期入れ、衣類)は高い金をかけて使い古すんだが、娯楽に入るものは最低限しかかけなかった。
着飾るものが立派だけど中身が伴っていないってので、学生の頃は馬鹿にする人が多くて、中には
「お前にこんなもんいらんだろ」
と取り上げようとする人もいた。
ゲームと読書が趣味なのに
「中古で出るのを待つ」
と言って、モンハンは3が出た時に投げ売りされた2を買い、本は図書館でリクエストしてすませていた。
周りは、流行りに乗り遅れて気づいてない人、貧乏でモンハン3を買えず安かった2を3と間違えて買ったバカ、と言っていた。
俺がそれを気にして新しい物を買おうとしたけど、
「別に今すぐしたいものでもない、2でなぜ楽しめないと思う?私はこれが楽しいよ」
とあっさり断られたうえ、
「私は私の楽しみがある、迷惑をかけているのでなければ周りに理解を求めるつもりはない、私の行為はお前にとっての迷惑か?」
とはっきりとした意思を示されたので、本人が気にしてないならと俺もそれ以上なにも言わなかった。
大学三年になったある日、4月生まれの俺の誕生会を開くって口実で、全員二十歳超えたから飲み会しようぜってことになった。
仲いい友達が誕生日プレゼント用意してくれることになり、当日友達は皆でお金を出しあってワインを、彼女は名前が刻印された時計をくれた。
その時計が結構な値段がするもので、
「これから就活も始まるから、仕事始まっても使えるものを選んでおいた」
と、どこにつけていっても恥ずかしくないものだった。
けど誰かがボソッと
「偽物じゃねーの」とこぼし、周りが同調しだした。
「偽物だと思うなら徹底的に調べろよ!」
と俺がキレ、友達も謝罪しろと迫ったが、意地になった野郎がマジで調べて結局本物だと判明した。
なのに周りは彼女に謝罪せず、盗んだ金じゃないのか、とか言い掛かりまで付け出したので、それからそいつらとは関わりを断った。
彼女は相変わらずどうでもいい、みたいな顔してたけど、俺に高価な贈り物をしたので一部媚びだす人も現れたらしい。
ある時媚びだした二人が彼女に
「今月誕生日だし、時計ほしいなぁ~」
とおねだり。
彼女は「解った」と返し、翌日にはきっちり用意していた。
その時計とは…