どこでもドアが欲しかった

入学式で一目惚れしたあの子は、友達の彼女だった。が…

time 2016/12/04

入学式で一目惚れしたあの子は、友達の彼女だった。が…

大学の入学式、たまたま席が前後だった浮子に一目惚れ。
大学デビューと言わんばかりに髪を染め上げている奴らの中、黒髪の彼女は目立っていた。
俺はヘタレなもんでアタックなど出来やしなかったが、陰でそっと眺めているだけでも十分幸せだったさ。あの時までは。

さて、少し本題とはずれるが先程大学デビューなるものを鼻で笑うような書き方をした俺だが、何を隠そう俺も大学デビューした奴らの一人だ。
高校までボッチだった俺は見た目だけでもリア充になりたかったんだよ。
けれどどんなに髪を茶色くしようが、男向けの雑誌なんぞ読もうが、一向に俺には友達が出来なかった。
っていうか、今思えば痛かったんじゃないの。大体いくら容姿にお金つぎ込んでも、コミュ力がなきゃな、何にも変わらない。

そんな便所飯ルートに猪突猛進の俺に声を掛けてきた奇特なやつがいた。友男だ。
友男は絵に描いたようなイケメンリア充で、顔を見るのも恐れ多い奴だった。
奴はいつも輪の中心にいて楽しそうで、俺とは正反対の人種だった。
なのに驚くほど気が合って、すぐに仲良くなれた。
口下手な俺を上手くフォローして、輪の中に入れてくれた。仲間にしてくれた。
友男に対する恩は返しても返しきれないほどある。
それから程無くして、俺も皆となじめてきたころ友男が彼女を紹介したいと言いだしたのだ。

そして、友男の彼女を紹介され俺は驚愕する。
なんと友男の彼女はあの浮子だったのだ。
俺の淡い恋心は彼女と口を聞くこともないまま散ってしまったというわけだ。
それからしばらくは辛かった。友男からのノロケや、浮子からの会釈、挨拶。
その度に俺の心はキューっとなるのだった。
しかし、それも徐々に治まっていき純粋に友男におめでとう、と言えるようになる日がきた。
失恋は確かに堪えたがそれ以上に友男には色々な感情を教えてもらったからね。
それから少しして、あるきっかけから浮子とも話すようになり、三人で飲みに行くことが増えた。
もうその頃には浮子に対する俺の気持ちもすっかりと消えて、本当に男友達三人で飲みに行くような、そんな状態で臨めたわけだ。
相変わらず二人はラブラブで、それがいつまでも続くと思っていたわけだけど・・・。

どこかで歯車が狂い始めていた。


まず、友男がバイトに勤しみ三人で会う機会が減っていったということ。
次に友男の周りから少しずつ友達ら(仮にA男、B男、C男としよう)が離れてきているということ。
前者は別に特に気にしていなかった。元々友男はバイト志望があったし。
三人で会えなくとも浮子と二人で飲む事もあった。
(今思えば浮気と思われても仕方ない。でも本当に俺には浮子を女として見る気持がなかったのだ。)
後者の方は気になった。
いつも一緒につるんでいた仲間なのに何も言わずに立ち去るなんて、と友男も落ち込んでいた。
別に友男や俺が何をしたわけでもなかった(と、思う。)
なのに黙って逃げてくなん、と結構俺も落ちた。

そして、いつしか友男は大学にも顔を出さないようになった。
バイトを増やしたみたいで、忙しいとの事。
友男はどんな場所でも人気者だから、少しの間だけでも別の所で現実逃避したいんじゃないかな、って俺は思った。
だから何も言わなかった。
浮子に聞いたところ、最近は連絡もとっていないらしい。
しかし浮子は別に気にとめた様子じゃなかった。それどころか驚くべきことを口にしたのだ。

浮「もう私、友男とはやっていけない・・・。他に好きな人ができたの」
俺「えっ・・・どういうことだよ、それ、友男に伝えたのかよ」
浮「ううん・・・まだ話していない。ってか、会っても無いし」
俺「そんな状態じゃ駄目だろ。中途半端で付き合ってんなよ」
俺はかなり怒っていた。何日も休んでいる友男を気にも留めない浮子に、それどころか新しく好きな人ができたと抜かしている浮子に怒りを覚えたのだ。
すると、俺の強い物言いに傷ついたのか、浮子が泣き出してしまった。俺は焦った。

浮「うっつううう(すすり泣いている)」
俺「ごめんって、許してよ。もう一度友男と話し合ってよ。 ついきつく言っちゃってごめん」
浮「俺男君、全然分かってない・・・私の気持ち」
俺「え?」
浮「私の好きな人、俺男君なのにっ」

俺「えっえっ何?え、どういうこと?」
浮「やっぱ俺男君何にも分かってない!私は俺男君が好きなの。
だから友男とは付き合えないんだよっ」
俺「そんな急に言われても困るって・・・」
浮「いいの、分かってたから。でも今日は一人でいるの寂しいよ・・・」
俺「はい?」
浮「一人で真っ暗な部屋に帰るのが寂しいの。好きな人に分かってもらえなかったのも。」

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