一喝すると、視界の中で走り回っていたガキも足が止まります。
捕まっているガキ。顔色が一気に変わります。
「ごごご、ごめんなさい…」
「謝りゃ済む話じゃねーんだよ。ケータイ出しな」
「え…」
「えじゃなくて、ケータイを貸せと言ってるんだが」
「ケータイ持ってません…」
そうこうしている内に他のガキが集まってきて、遠巻きに私達を見ます。
「そうか。じゃあ、家の電話番号教えな」
「xxxx-xx-xxxxです」
私の携帯からその番号に184付で電話をかけ、まず最初にガキに話をさせ、
相手が本当に自宅にかけた事を確認した後、電話を取り返します。
「もしもし。突然のお電話すいません。
失礼ですがお宅様ではお子さんの躾をされていますか?」
『あなた誰なんです?』
女性の声が返ってきました。
「お宅のお子さんなんですけどね、人にぶつかっていながら謝りもしないし邪魔だと言って
バカ呼ばわりされたんですよ。学力向上も良いかもしれませんけどね、躾をちゃんとしないで
公共の場に出すのもどうかと思うんですよ」
『そんなのあなたに関係ないでしょう。それにうちの子はおとなしくしているはずです』
「じゃあ、これから警察に言って、息子さんに衝突されたせいで
足首を捻挫したという事で調書を取っていただいても結構ということですね。
第三者を交えて状況を説明できますし」
『な…なんでそんな事…』
「息子さんは公共の場ではおとなしくしている筈なんですよね。
だったらこんな怪我をするはずも無い。でも実際私怪我してるんですよ。
当事者同士の話ではそちらも納得されないでしょうから第三者を間に
入れようって事です。あ、あと、息子さん携帯お持ちですか?」
『持たせてますけど…』
「さっき尋ねたら持ってないって言うんですよ。無くしちゃったのかなぁ」
『あの…すいませんが警察には…子供のしたことですし…』
「子供のしたこと…ですか…。捻挫させられて子供のしたことで済ませるんですか。
あーそうですか。分かりました」
電話を切ってガキに向き直ります。
「警察いくぞ」
ガキ、泣きそうな顔になりながらトボトボついてきます。
駅前の交番へ行き、事情を説明。
お巡りさんも「まぁ子供のしたことだし…」と言うが、捻挫した事と当事者間での話だと
ガキの親が信用しない可能性がある事を伝え、一応の状況説明書類を書いてもらう事に。
警官が別室でガキから話を聞き始めるのと同時に、ガキのかばんにある携帯が鳴り、
ガキ、隠すように電話に出る。が、お巡りさんが優しい物言いで携帯を預かり、会話をする。
親電話の向こうで平謝りなのが漏れ聞こえる。
お巡りさん電話をガキに返しながら向こうの親も謝ってるから勘弁してあげなと言われ、
状況説明書を親に渡す事で勘弁する事に。
交番を出て少し行った所でガキが通っている塾に連絡し、一連の状況を説明。
注意のプリントを配った方が良いのではと進言して電話を切りました。