うちの実家は都内で中華料理屋をやっている。
本店は小さなビルで、両親と長兄夫婦でまわしています。
支店は、セミリタイアした祖父が家の一階を改造した、趣味でやっている店。
末っ子の私がパートで手伝っています。
次兄は大学卒業後に金融関係に就職。職場結婚。
と家業に一切の興味なし。
次兄嫁がいわゆる
「意識高い系」
の人で、資格をいっぱい持っていて、なんにでも口を出してくる人。
たとえば、結婚する前、顔合わせをうちの本店でやったんだけど、まだ籍も入れていないうちから
「この餃子、大きすぎますね。女性客には、京都の餃子みたいに一口サイズがいいんですよ」
とか言い出す。
(うちは皮厚で肉汁自慢の餃子が評判なんだけど)
店のお茶を一口呑んで
(うちは曽祖父の友人だった台湾のお茶屋さんから今も購入してる。かなり良質な凍頂烏龍茶)
両親は
「次兄は、店とは無縁だから」
と、そういったところは見ないようにして無事結婚。
次兄夫婦結婚後の大晦日、本店は中華おせち、支店は年越しラーメンで大忙しなのに、31日の夕方に連絡もなしにやってきた次兄夫婦
「お腹が空いた」
とブーブー。
母が
「冷蔵庫に材料あるから、長兄の子供たちの分もつくって、先に食べて」
といったら、
「なんで、来客に働かせるのか、嫁いびりだ」
と次兄嫁はブチ切れ。
3日前に言ってくれれば用意してあげたのに。
(ちなみに、長兄の子供2人は、自分たちでチャーハンつくって食べていた)
で、6年前の春、私は祖父の店に修行に来ていた人と意気投合し結婚。
支店は、私たち夫婦に任せるか、みたいな流れになったら、夏に次兄嫁が一人で乗り込んできた。
次兄嫁「長兄が本店、妹が支店を継ぐなら、私たち夫婦はどうすればいいのですか」
母「あなた達夫婦は中華料理屋になんか興味ないでしょ。お金なら平等に残してあげられるけど、店は無理よ」
次兄嫁「私が本店と支店の経営を見てあげます!」
本店と支店の経営を統合して会社組織を作り、簿記2級の次兄嫁が経理部長をやる。ついては、月50万円の給料をよこせ、と。
父は呆れ返って
「うちの遺産問題のことを話すなら嫁じゃなくて次兄本人に話すことだ」
で終了。
母が、次兄本人に電話すると
「嫁も義実家を親身になって心配してくれてるんだよ」
と脳天気。
これでまた、次兄夫婦との関係は遠くなる……
リーマン・ショックで、次兄が会社をリストラされた、というか、早期退職優遇制度で辞めた。
で、次兄夫婦襲来。分厚い書類を持ってきた。
表紙には『○○飯店ネットショップ企画書』。
うちで評判の良い点心(餃子、焼売、小籠包、肉饅、中華菓子など)をネットショップで売る。次兄が社長、次兄嫁が副社長。
次兄夫婦がネットショップたてて、注文と決済を担当する。
価格は次兄夫婦が決定。本店と支店は次兄夫婦に指示された納品価格で下ろす。
急速凍結庫、ダンボールの用意などは、本店と支店の負担。
そのことを指摘すると
「今までより大量仕入れになるから本業の利益率が良くなるはず。それが賃金」
と義兄嫁。
両親が
「点心は、原材料費よりも、人件費つまり手間のほうがかかるんだ」
といっても、
次兄嫁「そこは機械などでオートメーション化してください」
父「その費用はどこから出るんだ?」
次兄嫁「設備投資ですから、自分たちでお願いします」
祖父「それじゃ、○○飯店の味じゃなくなる。私が認めん!」
次兄嫁「たかが点心じゃないですか」
とニヤニヤ。
その間、次兄は、嫁の言うことにウンウン頷いているだけ。
最後に、祖父が
「次兄はどう考えてるんだ?」
と問うと、
次兄「みんな、WinWinだからいいと思うよ、うん。なんで、反対するのかがわかんない」。
祖父「ウンヌンだかワンワンだか知らんが、手前勝手な言い分で、店に口を出すな」
で、話し合い終了。
次兄夫婦が帰ってから、長兄奥さん泣いてた。
「点心だって、忙しい時には、お母さんと私で営業時間後に睡眠時間削ってつくってるのに、たかが点心って」
私もつられて泣いた。
それから1年ちょっと、次兄夫婦は我が家に寄り付きもしなくなった。
平和だな、と思っていたら、支店の常連客さんが変なコト言い出した。
客「こないだ、おたくの冷凍餃子買ったけど、全然美味しくなかったよ」
私「え? うちは本店も支店も冷凍餃子なんてやってませんよ?」
客「いや、楽○にネットショップ出してるじゃないの? ○○飯店ネットショップって」